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アカッバドーラ 2

drftgyhujiko


ぼんやりと薄い月が斜めにかかっている。
遠くの街灯に照らされたオレンジ色のFIAT・チンクエチェントのお尻に結わえ付けられた
籐のバスケットの中に、余りもののケーキを詰め込む。

今夜は冷えるかもね・・と独り言のようにつぶやいて
薄い絹のスカーフを首にグルグル巻きつける。

「モモ。今日はどこに行けばいいの?」
車のキーを差し込みながら、助手席に、乗り込んだモモに聞く。
「今は、まだ言いたくないのね。わかったわ。じゃ。道案内お願いします」
シートベルトはちゃんとしめた?」

それまで前をにらむように座っていたモモは、
横を向いて力強くうなずいた。

「じゃ。いくわよ!」

グルングルン。ブルンブルン・・・ブルブル・・プシュ・プシュプシュ・・・・ブルブルブル~~。
古い古いチンクエチェントは、エンジンがなかなか掛からない。

「ちゃんと今日も、私とモモのお供をして頂戴。いい子だからお願いね。バルーミ」

風変わりな主人は、その車を私たちのバルーミと呼んでいる。

グルン。グルン
グルングルン。ブルンブルン・・・ブルブルルル・・・ブルブルブル~~。

「ありがとう。バルーミ。モモ!じゃ・・出発進行!ヴィア~」

そのケーキ屋の近所の人たちは、風変わりなケーキ屋が、夜中にどこに行くのかを知りたくて
毎晩、こっそり窓の影から、様子を伺うのが習慣になっていた。
毎晩。毎晩、いくつもの家の中で同じように答えない質問が繰り返されている。


「今日も、また残り物の入っているらしい箱を積んで、どこかに出かけて行ったようだ」
「いったい、何者なんだろうね?あのケーキ屋は」
「一日中、見てたわけじゃなけれど、お客が入っている様子もないし、一体
 どうやって暮らしているんだか・・・」
「夜中に、ケーキを他所の町で売っているのかもしれないね」
「夜中にわざわざ、車に積んで売りにあるくくらいなら、なんで、
 こんな村にケーキ屋を開いたんだろう?」
「得体が知れないわよね」
「悪い商売しているんじゃないだろうか?」
「愛想もないしさ・・・」
「犬に向かって、話しかけ、返事もないのに、まるで人間と会話してるように
普通に話しているでしょう?気持ち悪いわよね」
「あのケーキ。毎日同じ物みたいだし、腐っているんじゃないだろうか?」
「あんな見栄えの悪いケーキでも売れると思っているのかしらね?
田舎だと思って馬鹿にしているんじゃない?早くつぶれてしまえばいいのに!」


山の上のその村から降りるには、くねくねしたカーブをいくつもいくつも回り
くるくる くるくる 独楽のように降りて行かなければならない。

カーブが大きく右に傾くと、バルーミごと、中の店主もモモもぐ~~んと右に傾き、
左に傾くと、今度は、左にぐ~~んと傾く。

真っ暗な道の途中、時々すれ違う最新式の車は、どれもこれも、
大きな怪獣のようで、攻撃的で、真っ黒で、どんな時も忙しそうに
あわててあわてて、すれ違って行く。

そういう車たちに比べると、無防備で当たったら、一たまりもなく、コロンと転がってしまいそうな
小さなバルーミは、ぼんやりしたオレンジ色の薄もやのような光をはっしながら、右に傾き、
左に傾きながら、一身に走っていく。

山の下に降りきった四辻に差し掛かかると

「モモ。バルーミをナビしてね。バルーミもお願いね。私はちょっと準備をするから」

運転をモモとバルーミの2人に任せて、風変わりな店主は、ゴソゴソと
運転席に座ったまま、小さなポシェットの中から小瓶を取り出した。







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